PCが熱中症で死亡?2013/08/09 20:51


昨年初め知人に製作したPCが、先日突然電源が入らなくなったと連絡がありました。当初は電源ユニットが逝ったのではと、別の電源ユニットと取り替えましたが電源は入りません。
持ち帰って修理することとなりました。

PCのスペックは
M/B     Supermicro C7Q67
CPU      Core i7-2600K
Memory Kingstone KVR1333D3N9K3 2G*4
OS        Windows7HomePremium
あとはHDDとDVDです。
筐体は小型のSARA3に450W電源です。

症状は電源ボタンを押しても電源が入りません。
詳しく見てみるとM/B上にあるスタンバイ電源LEDが点灯していません。
この場合は電源ユニットから電源がM/Bに供給されていないことを意味します。
電源ユニットを新品に交換しましたが、相変わらずM/B上のLEDは点灯しません。

このLEDは電源ユニットからM/Bに電源が供給されている時に点灯し、パワーボタンでPCが起動できる事を示します。このSupermicro製のM/Bでは電源ボタン以外にもキーボード、NIC、モデム等で電源を入れるようにも設定出来、その準備段階での電源供給状態をLEDが表示します。

M/Bから配線を外し点検することにします。

C7Q67

筐体はATXも入りますが基本的にはMicroATX用の小型薄型筐体で、排熱用に80φのファンが2基付いていますが、あまり排熱がいい筐体ではありません。
このPCを使う時室温が上がったらエアコンを使用して欲しいと注意をしたのですが、使用する当人はエアコンが嫌いで扇風機を使用していたとのことです。
連日の暑さでもエアコンは使用せず、昼間でも「自分だけ」扇風機で凌いでいたようです。

この筐体で室温が35度超えるとかなり辛いですね。CPUも発熱量の少ないものではありませんし、空気の流れもいい方ではありません。
取り敢えずM/Bを取り外してみました。

C7Q67


この状態でつぶさに見ましたが見た目の異常はありません。
つぎに裏から見てみます。

C7Q67


ざっと見ただけではやはり判りません。
焦げていたりすれば判りやすいのですが、そんな状態になるのは希です。

しかし、よく観察するとオーバーヒートの痕跡らしきものが次々と見つかりました。

熱中症-6


四角くうっすらと変色した跡が見えます。中央に突き出すのはコンデンサーの足です。

熱中症-5


ここも四角く変色した跡があり、やはりコンデンサーの足が有ります。

熱中症-4


真ん中にやや曲がって下から上へ伸びる変色した跡。

熱中症-3


ここにも変色した跡。


熱中症-1


スケール当ててみました。1ミリの中に4本の配線が見えるでしょうか。
こんな配線がこの下に何層もあります。
多層基板と言ってサンドイッチ状に見えない基板が数枚あるのが今日のM/Bで、電流が流れれば当然発熱します。
基板の裏面には腐食防止の塗料が塗られているのですが、これが内部の発熱等で変色しているみたいですね。

基板の表裏にあるプリント配線の放熱性に比べれば、多層基板の中のプリント配線の放熱に難はあります。
Supermicro社のパーツは基本的に耐久性のいいものが多く、そのためServer用としての耐久性も優れているのですが、それは必ず「冷却が出来ている」ことが前提であり、ましてや人が汗をかく環境での耐久力までは考慮されていません。

会社のServer等は夏は24時間冷房の中にいても、基板温度は40度を超えています。もちろんWorkstationで負荷を掛けると45度を超えますし、CPUは70度を超えます。それが冷却無しであれば基板を含めたパーツの負荷になることは当然で、今回の故障も扇風機をオーナーにだけに当てる環境が問題だったのではないかと想像します。

いうなれば「パソコンの熱中症」でしょうか。

M/Bが原因であればスタンバイLEDが今後点灯することはないでしょう。
今回の修理は原因を伝えてM/Bの取替をオーナーに提案しました。
また、今後やはり冷房はしないと言うことなので筐体を通風のいいものに変更、排熱と通風対策に重点を置いた大がかりな改造をすることで了承を得ました。