オーディオルーム2013/05/25 20:35

オーディオ機器より部屋に投資が先行しました。
もう作って15年程経ちます。

スペースは約22帖、3階建ての1階部分に作ったのですが、残念ながら天井高が2400mmしか取れてません。一番の失敗はこの天井高でした。
3000mmくらいを取ろうとすると高さ制限から半地下式になってしまい、施工費が数百万アップするので断念、結果として悔いの残る設計です。

ROOM


半地下式にすると床の仕上がり高はGL(地面のレベル)より下になります。
そうした場合には湿気を防ぐために建物外周にドライエリアを設けるか、湿気止めを兼ねた防水壁を設けねばなりません。
更にトイレやミニキッチンの排水が道路の下水管より下に配管することとなり、汚水槽に排水ポンプ、それに付属する電気設備が必要になり、数百万のコストアップになってしまいます。

簡単に半地下や地下室作ると膨大なコストが掛かるのは職業柄承知してますし、更にそれを維持管理するコストも無視できません。
ただでさえ防音・遮音にはコストが掛かりますから、ある意味どうしても妥協せざるを得ない条件でした。

それ以外はほぼ思いを注ぎ込んだつもりです。

不平行な壁面はコンクリート壁と内装仕上げ面までの空間は最大で500mm以上に及びます。
壁を外から順に

タイル+モルタル約50mm
コンクリート壁180mm
鉛付石膏ボード15.0mm+石膏ボード12.5mm
LGS(軽量鉄骨下地)60mm(斜空間で10~200mm)+吸音材(50Kg/立米)
鉛付石膏ボード15.0mm+石膏ボード12.5mm+壁紙

という具合です。

石膏ボードの周辺部とジョイント部には全てシーリングをうち空気層をシャットアウトしてあり、空気伝播による音の漏洩は極力防ぎました。
天井も同様の構造でLGSの65mmが45mmになったのみで、やはり石膏ボードは吸音層をはさみこんで4重張りです。

道路に面した窓も設計ミスが当初ありました。エアタイトの2重サッシを注文したはずが普通の2重サッシが取り付いていて、後から大急ぎで防音用ペアガラスサッシを追加する羽目になりました。

4重ガラス


ただ、結果的には3重サッシ、4重ガラスになり遮音は一層よくなりました。
サッシの防音の盲点はサッシ枠内の空気層です。
この点の対策としては一つ目としてビル用サッシではなく木造用サッシをRC造の建物に使ったことです。これは木造用サッシ枠の方が内側が開放型になっており、モルタルの充填がしやすいことです。
ただし、木造用サッシ枠は内側に木製枠の取付が必要となり、コストと手間は若干上がります。この方法は一般的には行なわれません。
それでもサッシ枠周りに空間が生じることがあるため、二つ目の対策として発泡剤をサッシ枠内部に充填させました。
サッシ枠の所々に充填用の穴を開け、内部で発泡して隙間から空気を追い出す充填剤です。

これは反対側の窓(自車の車庫側)のFIX窓(開放できない固定窓)にも応用し、サッシ周りはもちろんサッシの中桟内部も全て充填してあります。
副次効果としてアルミ製サッシ枠と中桟の共鳴を抑える効果もあります。

FIX窓


FIX窓のガラス面積が大きくなると共鳴して太鼓のように鳴る場合もあるため、敢えて中桟を複数入れてガラス1枚の面積を減らし、共鳴を嫌う措置をしてあります。
ここは5.0mmのガラスが2重になっています。
建物内の車庫でシャッターがある空間のため、道路に面した窓よりは防音効果が低くても問題ありません。

音壁

スピーカー後部はダイケンの「音壁」という無垢材の乱張りボード。下地は厚さ180mmのコンクリート壁にアピトンという木製下地です。アピトンは生木では水に沈む木材としても有名で、質量が重く共鳴しない下地材としては最適ですが、現在市場には少なくなった材料です。
当時材木店で20年程野ざらしで干して放置してあったのを格安で入手しました。
下地から曲面下地として、平たい「音壁」を特殊な加工で曲げて貼り付けてあり、下地材の間には吸音材(50Kg/立米)が充填してあります。

扉もメーカーの扉図面に変更を加え、特殊な防音扉にしてあります。

扉


厚みは45mmに抑えてありますが、鋼板製の内部には中桟を2倍に増やし、鋼板面には内側から石膏ボードを貼り付けてあります。
薄い扉でも重量は100キロを超え、グレモン錠と共に閉まれば通常の防音扉以上の遮音効果があります。
木製の市販防音扉を使いたかったのですが、甲種防火の階段室に面しているため鉄扉しか使うことが出来ず、特注の防音扉となりました。
ビルの空調室用の防音扉も考えましたが厚みが100mm、コストも似たように掛かるので特注の方を選択しました。


床はコンクリートにタイルカーペット、スピーカーの下だけはフローリング張りです。
一応コンクリート下には二重の湿気止めを施したので、湿度の高い状態にはなりません。

機器の買い換えは出来ますが、部屋の作り替えは簡単ではありません。
オーディオを趣味で始めて25年目に作った部屋ですので、それまでの知識は一応入れるだけ入れました。
ただ、師匠に叱られたのはコンクリートむき出しの時点から残響や共鳴測定を始めなかったことでしょうか。
内装を作るに従いどのように悪い癖を減らしていくかは、作る時々に測定し試行錯誤をしなければとならないとのことでした。
出来上がってしまった部屋での対策より、作っている途中での対策の方が効果的でコストも余分に掛からない、そう言われました。

考えてみればそうですね。部屋一つ作るにもやはり計測は大事です。
まぁ、時既に遅しでしたが、癖はあるものの何とかなった部屋になりました。